この作家は一瞬を切り取る。切り取って、過ぎ去って行くはずの時をやわらかく、あたたかく見せてくれる。
どこかで見た光景なのかもしれない。もしかしたら、いつか見たかった光景なのかもしれない…。
かすかに笑顔をうかべる老人。孫なのか傍らには少しだけ早熟そうな少年が本を読みながら立っている…。
考え込む猿は深い皺をきざんだ顔をして一点を見つめている。
どこか遠くを見ているキリンもいる。目を離すと、その頭をぐるりと旋回して違うを方を見るのではないか、と思う。
流れていく時間の中で、一瞬奇跡のような時が訪れる。だが、それは常に流れいく。
その大切な一瞬を、この作家は切り取ってくれる。
そして、彼は本来過ぎ去って行く「一瞬」が「熟成」していくという奇跡を見せてくれる。
多くの絵画や彫刻は、仕上がったその時が完成形である。作品は日に日に汚れ色を失って行く。
ところが、この人の作品はだんだん成長していく気がする。
紙、金属、木材…素材は数多あれど、やわらかく動物に由来する革は、本来は劣化とよばれる変化を楽しみにし得る希有な素材だ。
本池秀夫氏は40年にわたって、この素材を使って、誰もが出会いたいと願う瞬間達を切り取り見せつづけてきた。
それは革という身近な素材について、我々が気づきもしなかった可能性を見せ続けてくれる活動でもある。そして時には、革に対して我々がいだいている常識をくつがえすかのように、まるで別の素材であるかのように使って見せる。
革は生き物に由来する。石や金属以上に大切に扱わなければいけない素材であるはずだ。
だが、本池秀夫氏の作品を見ていて思う。
彼の作品に使われている革は幸せだ。
そして間違いないのは、
彼がきりとった「一瞬」を目の当たりにする我々がこのうえなく幸福であるということだ。
島根県で本池秀夫氏の展覧会が開かれている。
『本池秀夫 革の世界』
島根県立石見美術館にて開催中(〜8月30日)
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本池秀夫特集記事はこちら
Text JUMP KATO
本池秀夫(もといけひでお/1951年生まれ/米子市在住)は、大学在学中にヨーロッパに渡り、ローマの骨董屋で出会った古い陶磁器人形に感銘を受けたことをきっかけに、創作活動を始めました。以来、革を素材に老人や子どもの何気ない日常のひとコマを題材とした「革の人形」や、実在の動物を等身大で表現した「革の動物」など、素材の質感を活かした作品を制作しています。
本池は、石畳や木のベンチなど、本来革でないものも革で忠実に再現し、革という素材の新たな表情を提示します。
本展は、約40年にわたり革表現の可能性を追い求めてきた本池が20代に制作した初期作品から、初公開の最新作品まで約70点を展示し、本池の創作世界を概観する試みです。
[企画展]
本池秀夫 革の世界 -LEATHER ART WORKS OF HIDEO MOTOIKE- 展示室D
本池秀夫(もといけひでお/1951年生まれ/米子市在住)は、大学在学中にヨーロッパに渡り、ローマの骨董屋で出会った古い陶磁器人形に感銘を受けたことをきっかけに、創作活動を始めました。以来、革を素材に老人や子どもの何気ない日常のひとコマを題材とした「革の人形」や、実在の動物を等身大で表現した「革の動物」など、素材の質感を活かした作品を制作しています。
本池は、石畳や木のベンチなど、本来革でないものも革で忠実に再現し、革という素材の新たな表情を提示します。
本展は、約40年にわたり革表現の可能性を追い求めてきた本池が20代に制作した初期作品から、初公開の最新作品まで約70点を展示し、本池の創作世界を概観する試みです。
会期:
2010年7月16日(金)〜8月30日(月)
開館時間:
10:00〜18:30(展示室への入場は18:00まで)
休館日:
火曜日(ただし8月10日(火)は開館)
会場:
展示室D
関連イベント
本池秀夫本人による
特別ギャラリートーク
当展覧会出品作家、本池秀夫本人による作品解説。作品を目の前に、制作秘話なども折り交ぜながら、作家ならではの視点で作品の魅力を語っていただきます。
日時:
2010年7月18日(日)、8月1日(日)、22日(日)
各日14:30より
会場:
展示室D
入場料:
参加無料/申込不要 *ただし観覧券またはミュージアム・パスポートが必要
ワークショップ
革で小さな動物をつくろう!
本池秀夫の指導で、革を素材にちいさな動物をつくります。プロの技を目の当たりにしながら、本格的なレザー・クラフトの体験ができる、またとないチャンスです。
日時:
2010年7月17日(土)、31日(土)、8月21日(土)
各日13:00〜16:00
講師:
本池秀夫 他
会場:
講義室
入場料:
参加費500円/要申込/各回定員20名(先着順)
対象:
小学校4年生以上 *ただし小学生以下は保護者の同伴が必要
グラントワ tea ガーデン
癒茶(いやしちゃ)
冷たい飲み物で夏の疲れを癒しませんか?
日時:
2010年7月24日(土)、8月14日(土)
各日11:00〜
会場:
美術館ロビー 先着80名/申込不要/無料
*ただし観覧券またはミュージアムパスポートが必要
見どころ
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革の人形
老人と子どもの何気ない日常を再現した、小さな革人形。革で作られた人形は、他に例を見ない。素材の表情を活かした、柔らかさとあたたかみのある作風が特徴。その世界観は、イタリアの磁器人形作家ジュゼッペ・カッペの緻密さと、ノーマン・ロックウェルのノスタルジックさの両立を目指している。
本展では新たに制作された「ピエロ・シリーズ」も初公開する。
緊急特別イベント
「美術館ナイトサファリ」
夜の美術館、そこは秘密の場所・・・
その秘密の場所に「探検隊が」潜入。
なにやら動物たちの声があちこちから聞こえる。
懐中電灯の明かりだけを頼りに、展示室をくぐり抜け、
声をたどって動物たちを探しに行こう!
*美術館を夜間に開館し実施する特別イベントです。
日時:2010年7月19日(月・祝)、8月7日(土)、8月14日(土) 全3回
各日20:00から21:00まで
会場:展示室D(企画展「本池秀夫 革の世界」会場)
対象:5歳以上小学生までの子どもとその保護者の方
要申し込み 定員は各回10名程度(先着順)
お申し込み:0856-31-1860(グラントワ代表電話)
なにやら怪しい催しが企画されたようですよ・・・各回の定員は10名程度、早い者勝ち。
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